第九回アマゾンでの10年

2008年、20年間の海外勤務から帰国、アマゾンジャパンに転職した。日本の海外子会社の社長の立場から、米国本社の日本法人のローカル社員として経営の違いを知りたかったからだ。経営メンバーとして小売、マーケットプレイス、企業向け販売部門を統括し創成期から成長期にかけて計10年間、事業を支えたがが、米国企業の海外子会社の統治は全く違っていた。日本企業であれば、それぞれの法人に任せることも多く、拠点毎の文化に合わせて経営方法が違う。アマゾンはどの国でも本社の経営方法に従わせた。日本でシステム開発は許されなかったし、人を採用するのにも本社の承認が必要であった。ただ、それは世界共通のプラットフォームとなり一つの開発で世界展開ができるなど非常に効率的な経営であった。また、入社時約三千億円だった日本の売上が退職時には約二兆円となったが、そのスピード成長の骨幹となっているのが顧客中心思考である。静岡県の皆さんには数億点の商品の多くが小田原倉庫から出荷され、翌日には届けられている。地球上のありとあらゆる品揃えを提供することをミッションとし、その価格、利便性に徹底的に拘っている。顧客の立場から見た期待をさらに超えるサービスをどんどん生み出している。その利便性は、正確で早い配送、多様な支払い方法、プライム会員向けの配送料無料や映画、音楽などの無料配信などに加え、今やネット販売では当たり前になっている商品に対する顧客レビューもその一つだ。多くのお客様が参考にして購入されているが、当初はメーカーからは商品に対して悪いレビューが付くと商品イメージが悪くなると反対された。それでも徹底して押し進めたのはお客様目線で何が重要なのかを最優先したからだ。
Kenhoshi&Company代表
オイシックス COO 他