3回の連載にわたって、”元Amazon星氏語る、Amazonはなぜに世界企業になったのか?
”と題した記事を掲載いただきました。
https://145magazine.jp/money/2019/11/amazon15/
https://145magazine.jp/money/2019/11/amazon16/
https://145magazine.jp/money/2019/11/amazon17/
【第1回】Amazonイズムはシンプル思考にある〜元Amazon星氏語る、Amazonはなぜに世界企業になったのか?
子供の頃、「日本はすごいんだ」そう親から聞かされ、僕は育ってきた。ただ、それも昔の話。「GAFA」などプラットフォーマーの台頭を許し、当時の日本企業の勢いは今や見る影もない。
その間、急成長を果たした企業は日本の企業と一体何が違うのか、と。僕は気になってこの人に聞いてみた。
星健一さんである。星さんはアマゾンジャパンで2008年からホーム&キッチン事業部の事業部長に始まり、家電14事業部からなるハードライン事業本部と、セラーサービス事業本部の事業本部長、末はAmazonビジネス事業本部長など、約10年にわたって第一線で、活躍してきた方だ。
勿論、Amazonの成長ぶりは言うまでもない。1994年に創業されたこの会社は、時価総額9230億ドル(2019年7月末時点)となり、Microsoft、Appleに続き、世界第3位の企業となったのだから、世の中はわからない。
星さんは、アマゾンジャパンで数百人の時代から何千人の社員を抱えるまでに至る、その過程も知り、Amazonの成長を肌で感じて来た一人だ。 取材を始めると、星さんはまず紙に書き出し、こんな話をした。ベゾスが創業時代に、創業仲間とともに話した「フライングホール」という考え方である。
ベゾスが、仲間といたレストランで、そこにあった紙ナプキンを取り出し、書いた成長のための図で、社内では今や伝説となっている。20年以上たった今でもその考えはAmazonの礎となっているのだから。
図を見ながら、読んでいただきたいが、
・第一に「品揃え (selection)」の幅を広げる。
・続いて、その幅を広がると「顧客体験(customer experience)」が高まるので、顧客満足度が向上。
・顧客の満足度が高まれば、それは「訪問顧客(traffic)」増加に繋がる。
・結果、ストアへのアクセスが増えていく。
・それがまた「販売者(sellers)」を増加させ・・・
最初の「品揃え (selection)」に戻り、このサイクルを繰り返すうちに、成長していくというものだ。
実にシンプルだと思った。星さんはまさに、そこに大いに頷いて、こう語った。「物事を単純に考えていくということが、成長にとっていかに大事か」ということをAmazonに入って、思い知らされたと。
ビジネスモデルが単純であることは、社内の人間が理解しやすいから、皆が実践しやすい。逆に、複雑なことは覚えるのも大変な上、遂行するには労力もかかる。またエラーをチェックするにも、軌道修正するのも、そして途中で止めるのも大変だ。そう星さんは話す。
Amazonの成功を導き出す、数々のトライアンドエラーはこの精神に基づくことがわかる。勿論、成功の事例においては、単純さ故、継続性を持たせることも可能で、いつまでもターゲットを固執して追うことができ、それが事業として紙ナプキンの絵のようにぐるぐると回り定着するのも早いと、付け加えた。