拙書「amazonの絶対思考」から抜粋された”<部下が上司を評価する…Amazonの急成長を支える「限りなく公平な人事評価制度」”の記事が掲載されました。
https://biz-journal.jp/2019/11/post_127605.html
部下が上司を評価する…Amazonの急成長を支える「限りなく公平な人事評価制度」
世界を動かす4大企業「GAFA」の一角を占め、多角的なビジネスを展開。かつて「オンライン書店」として認知されていたアマゾンは、ECだけでなく、サブスクリプションサービス「Amazonプライム」やクラウドコンピューティング「AWS」など、ひと言では形容できない規模のメガカンパニーとなった。
その売上高は2009年が約245億ドルだったのに対し、2018年は約2329億ドルだから、10年でおよそ10倍だ。この急成長を生んでいる原動力は一体どこにあるのだろうか?
その回答の一つとなりえるのが、アマゾンが従業員に求める「普通の基準」にありそうだ。
2008年にアマゾンの日本法人であるアマゾンジャパンに入社し、アマゾンビジネス事業本部の事業本部長を歴任、2018年まで在籍した星健一氏の著書『amazonの絶対思考』(扶桑社刊)は、アマゾンの理念や行動規範、人材採用、ガバナンスを内部の視点から解説した一冊。
本書を読むと、アマゾンの「普通の基準」は表面的には非常にシンプルで「当たり前」だが、実践するとなると頭を徹底的に使わなければいけない、極めてレベルの高いものだと分かるだろう。
■部下や同僚、他部署の関係者も評価者 ハイレベルな人事評価
アマゾンが求める「普通」のレベルの高さを垣間見ることができるのが、人事評価だ。
一般的な人事評価方法というと、例えば半年や1年に一度、上司と部下が面談し、目標を達成できたかどうかに基づいて、上司が最終的な評価をくだすといったところだろうか。しかし、これでは上司の好き嫌いや人間関係が大きく影響しかねない。いくら上司が「公平に判断している」と考えても、人間はそこまで公平な目で見ることはできない。
一方、アマゾンの人事評価は「公平にして厳格」であると星氏。その評価基準は三つある。
一つ目は「SMARTゴール」に対するパフォーマンス。
「SMART」とは「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(会社及びチーム目標との関連)」「Time bound(明確な達成時期)」の頭文字を合わせたもので、この五つの原則にかなったゴールを設定し、それに対するパフォーマンスを評価する。
達成度は5段階に分けられており、評価は1年に一度。中間に一度、進捗確認が行われる。オーソドックスな評価方法だ。
二つ目は、アマゾンで働く「アマゾニアン」たちの規範「リーダーシップ・プリシンプル」をベースにした、その人のリーダーシップや仕事の進め方の評価だ。
その評価方法はとてもユニークで、直属の上司だけでなく、同僚や被評価者の部下、仕事で関係した社内他部署の担当者など、360度からのフィードバックが評価に加味される。
被評価者に対してフィードバックをする人は10数名にのぼるため、一人の考えに依存しない、客観的な評価ができる仕組みだ。また、被評価者は同僚や他部署関係者に対して自分からフィードバックを依頼する必要があり、フィードバックする側も具体的な事例を踏まえつつ真剣に評価しなければいけない。
三つ目は「成長性」の評価である。
成長を続けるアマゾンにとって、既存社員の成長は極めて重要だ。ここでの評価は3段階からなり、最高の「High」は4年以内に職級が2段階上がる可能性のあるメンバー、最低の「Limited」は昇格の可能性がないメンバーとなる。
この「SMARTゴール」「リーダーシップや仕事の進め方」「成長性」という三つの評価を掛け合わせた最終評価をくだすのは直属の上司だが、そうなると人間関係に強く影響を受けた評価になるかもしれない。そこで、アマゾンでは、事業部門ごとに部門長クラスの人間が集まり、各部署の評価を再チェックする「Calibration調整」が行われる。
評価基準が幅広い。
部下が上司を評価する。
同僚や関係者も評価者となる。
現時点だけでなく成長性も加味する。
評価が妥当かどうかチェックされる。
評価において100%公平であることは難しい。しかし、これだけたくさんの人間の目が入る制度ならハイレベルな客観性を保つことができるはずだ。上司として優秀ではない人がいたとしても、部下や同僚からのフィードバックがあるため、いずれは淘汰されるだろう。
■働き方をも変えてしまう「普通の基準」
この人事評価のコアとなる規範が二つ目の評価のところで触れた「リーダーシップ・プリシンプル」である。
「Customers Obsession ― 顧客中心の判断基準は妥協するな」「Ownership ― 『それは私の仕事ではありません』は禁句」など14の項目からなり、仕事を進めるとき、ビジネスを考えるとき、新たなプロジェクトを立ち上げるとき、さまざまな場面でこの原則を基に意思決定し、行動する。
そうした原則を従業員一人ひとりが徹底してきたからこそ、アマゾンは今なお止まらずに成長を続けている。星氏がアマゾンジャパンに入社した当時、自分の働き方を変えざるを得ないことを痛感したという。
アマゾンジャパンに入った私が強烈に意識して、自らの働き方を進化せざるを得なかったポイントは、アマゾンの「普通の基準」がそれまで働いていた日本企業や海外現地法人での経験から身につけていた「基準」と異なることだった。(p.8より引用)
この本に書かれていることを取り入れようと考えても実践できる企業はほとんどないだろう。しかし、その一部を取り入れて徹底することはできる。大事なのは、「普通」をなおざりにしないことだ。今、最も強い企業の哲学を知るためにはうってつけの一冊である。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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