第十回 印僑と華僑

前回まで勤務した六ヵ国での経験を書いた。実は出張や旅行での訪問国数は六十三カ国にもなる。その経験の中で印象が強かったのは印僑(海外在住インド人)、華僑(海外在住中国人)だ。米国のロサンジェルスなどで巨大な中華街があることはご存知の方が多いであろう。世界の印僑の人数は1800万人、華僑はなんと6000万人にもなる。元々は1800年代に農業などの出稼ぎ労働者として移民したのであるが、今や土着しビジネスや政界で活躍している人が多い。アジアだと、インドネシア、ベトナム、マレーシア、シンガポールなどの人口の数十%は印僑、福建省などからの華僑だ。アフリカのケニアでもインド西部グジラート州からの印僑、マダガスカル、レユニオン、エジプトなどにも広東省などから移民した華僑が多かった。私も印僑、華僑と仕事をすることも多かった。ただ、特に華僑が駆使しているのが遠く離れた本国中国や他国の親戚を中心としたネットワークだ。例えば、中国製の安価な商品を仕入れて各国の小売市場を席巻していることが多い。そのネットワークに外国人が入り込みビジネスを拡大することは難しい。上部だけの関係性ではなく、相手のメンツをしっかりと立てて、親戚と同様に信頼を得る必要がある。そして、本国中国もその大きな華僑ネットワークを利用して、アジア、アフリカ、南米などの成長国のインフラ、経済に投資、経済協力を通じて大きな影響を与えている。これからの10年でますます中国の影響は強まり、資源のみならず購買力の上がった国々の需要をとっていくのであろう。それに対して人口減が進む日本はどうするのか? 英語教育の重要性が言われて数十年、未だ日本人の英語力は低いままだ。本当にもう待ったなしだ。
Kenhoshi&Company代表
オイシックス COO 他